27.第12回面白白樺倶楽部開催報告

平成14年5月12日(日)「白樺派と柳田國男と短説」
講師 柏芦原修二(「短説」主宰)

写真:講演後、質問に答える芦原先生
芦原先生は、400字詰原稿用紙2枚の散文作品『短説』を提唱されて17年、『短説』という言葉は「現代用語の基礎知識」に掲載されるなど、日本文学の伝統に新風を吹き込んでおられます。
『短説』は昭和60年に生まれたばかりですが、その原型は古典の『伊勢物語』、近、現代では『遠野物語』などに見いだされます。主な著書『はるひ夢幻集』『将門の空と大地』ほか。
「私は志賀さんに反発していました。」少年期に『暗夜行路』を読み、充分その内容を咀嚼(そしゃく)出来なかったことや、またこの手賀沼から京都に、湿気が多いからと言う理由でいとも簡単に引っ越すことの出来ることなどに土着の青年として激しい嫉妬を感じたとのことでした。
武者小路実篤の『友情』は、巧みではあるがあまりにも理想主義が強く、なぜ悩みが無いのだろうか。50歳過ぎに中勘助の『銀の匙』を読んだとき、この本はもっと前に読むべき本であったという強い後悔に似た気持ちであったと述べ、人それぞれの時期に合った本に出会うことが一生をも動かす大変大事なことであると、永年の読書経験を振りかえり、語ってくださいました。
最も影響を受けかつ愛読したのは、旧版『宮沢賢治全集』とのことです。
柳田國男と同じ利根町の生まれということで、小さいときから親しみを覚え、柳田國男の思い出としては、文化勲章受賞後に利根町役場挨拶に行ったが、当時の職員はまだそのことの大きさに気づかずにいたことなどをお話されています。
『短説』取り組みのきっかけは、『遠野物語』のように短い民間伝承話でも強い表現力があることに学び、短くてもより大きなエネルギーが集約され、無限に深くなり得ると予感されたからとのことでした。
『昔話は面白い』ことから、この地方の将門伝説から始まり、ダイダラボッチが手賀沼を作った伝説、年々消えてゆく古い塚にまつわる民話などの収集に取り組むようになりました。

写真:講演中のスナップ

親から子へ語り継がれて欲しい民話伝説などとともに、環境の変化に伴う地方独自の風習の失われつつあることに強い懸念をいだいておられます。
先生が語り継がれ残されてほしいものの例として、
古老から聞いた利根地方での蛙の鳴き声「ききなし

デンデコデ デンデコイ   裸でこい(意)オス蛙
ドコデヤルノ ドコデヤルノ どこでやるの メス蛙
ドコデモイイ ドコデモイイ どこでもいい オス蛙
バカバカシ バカバカシ   ばかばかしい 
それを聞いた、じいさん蛙

語り手は本人の倫理観、将来への希望など、それぞれの気持ちをこめて子供等に代々語り継がれてきたのでしょう、またこれをその地域の文化と呼ぶのか、落ちた話と取るのかは人それぞれなのかもしれません。
最後に利根地方の60年前に途絶えた盆踊り歌「利根の草刈り歌」と先生ご自身の作詞された「男山哀(あい)や節」を聴かせていただいて終了しました。

〜わしも若いときゃ
そでつまひかれ
今は孫子に手をひかれ〜