47.第21回面白白樺倶楽部開催報告

平成15年2月14日(金)
「新しき時代への挑戦〜白樺文学館への期待〜」
講師 アビスタ館長 渥美省一

講師の渥美省一さん
講師の渥美省一さん
昨年4月にオープンした、我孫子市生涯学習センター兼中央公民館アビスタの館長として迎えられた、渥美省一さんがこの日の講師です。
手賀沼のほとりに建った生涯学習センターは、以前あった中央公民館の古びた雰囲気を吹き飛ばす、しゃれたスマートな感じの建物となり、住民の期待もかなりのもでしたが、その期待をはるかにこえる大きな反響を呼んで、開館して1年にならないうちに入館者数が50万人を超えました。
これは我孫子市民1人が4回おとずれたことになる数字で、全国でも話題となりました。この日のテーマ『新しい時代への挑戦』は新聞報道ウォッチングからはじまりました。

1.妻と夫 夫が定年を迎えた夫婦
『自分らしい余生、夫は不要』
『自殺率は男高女低』
『夫が毎日家庭にいる』
ここから見えてくるのは夫と妻の間にある意識のずれ、定年を迎えた夫は、「これからは妻に寄り添って生きていこう、いつも一緒に」、と思えども妻は「私はこれからは自分らしく残りの人生を生きたい。」夫は不要、「毎日夫が家にいるのは耐えられない。」・・・・・・
妻はこの地で子供を育て地域とのつながりを持ちながら生きてきていますが、夫は会社の中の人間関係はあっても、定年になって毎日家にいてもまわりに友達もいない、妻だけが頼り。こんな状態になってしまった背景は30年、40年前の子育ての頃の夫婦のあり方に有ると言われています。

2.夫婦・親子間のコミュニケーション不足
夫は会社ばかりで父親としての役割をせず、母親にすべて押し付け、二人の間に充分なコミュニケーションをとることが極端に不足してきました。母親は懸命に子育てをし、ひたすらこの地で生きてきたのが大方であり、この世代に育てられた子供たちが、いま次の世代の子育て時代に入ってきていろいろな問題がでてきています。
「うちの子、青いオシッコ(紙オムツ)しませんがいつになったらするんですか」と、コマーシャルを見てそう思い込む若い母親。
「せっかんをしつけだ」、とただ寝かせているばかりなので赤ちゃんが育たず「サイレントベビイ」になってしまうなど、子育て世代に、今すぐ子育て支援の体制が必要な状態となってしまっていることなどの問題が深刻化しつつあります。
また「自立できない30歳代」、又これを許してしまっている親たち。「生命力のない青少年、大学でも不登校が始まって、大学が家庭訪問をしている笑えない現実」「授業中のメール」「整形手術が小中学生に広がっている」等などの問題はその延長線上にあるわけです。

3.コミュニケ−ション能力不足=言語能力不足
これらすべての世相はコミュニケーション能力の不足、人間関係つくり能力の不足から来ていると捉えて、その根底にあるのは言語能力の不足があると言及されましたことは、まさに卓見といえましょう。
言語能力は生まれた直後から、現在は母親の胎内から始まるとも言われており、学習によってのみ高められるもので、その学習は一生なされなければならないと説かれました。
渥美さんは、まさにここにこそ生涯学習センターの役割がある、と力説され話をすすめられました。昨今の問題の解決の本質に鋭く迫る、大変印象的なお話でありました。

写真:講演の様子

4.生涯学習の必要性と町つくり
妻と夫の問題は父と母の問題であり、その父と母に育てられた子供達はまたその影響を受けていくその連鎖を良い形にし、みなでよく生きるためのよりよい関係を作る努力をしなければいけない時期でもあります。それぞれの世代が、その世代をよりよく生きるための学習をし続けることが強く求められ時代になってきています。
学ぶということことは学校で学ぶだけでなく、生涯にわたる学習こそが最も大切なことで、学ぶことを通して地域と連携し、世代を超えて関係を持ち、学習によって仲間を作っていくことが必要なのです。
それがよい町をつくっていく事になるのです。よい町の条件とは

美  景観が美しいこと。
利  便利であること。
安  安全であること。
衛  衛生的であること。

でありますが、大切なことは生涯にわたる人間関係を作っていく仲間がいること(知縁)があることが大切な条件となります。
その知縁の拠点となるのが、生涯学習センターの役割であります。数年後我孫子市民の40パーセントが60歳以上となる今、市民が住むのによいまち作りが焦眉の急といわれるゆえんであります。

5.白樺文学館への期待
さまざまな態様の生涯学習センターが、今後、行政とどのようなバランスをとっていくか、ボランテアとの連携はどうあるべきなど、多様な問題が派生しつつありますが、これらは全てお互いの役割を尊重し、よりコミュニケーションを密接にして行き、実践活動を重ねてゆく中で、その回答を見つけていくしかないのではないかとのお話でした。

* * *

ここまでの渥美さんのお話の中で、最も強調されましたことは、地域、世代を越えてコミュニケーションをとるためには、今ほど精密な言語能力が求められている時代はかってなかったのではないかということでした。
写真:聞き入る参加者
「いまなぜ生涯学習なのか?」
その答えは、人は言語能力を高め、よりよい人間関係をつくるために生涯学習をするのです、と言い切ることができるでしょう。そこで、この大切な言語能力を深めるために、白樺文学館としてなにができるか、どんな役割を担いうるのか、ということになりますが、このことについては、これからも大いに議論を重ねて行く必要があります。 人々の実体験の場面は限りがありますが、文学の中での追体験は、時間・空間を超えて、とてつもない大規模なシュミレーションが楽しみながら可能であります。
苦しみをどう解決するかも、小説の中にその例が示されているわけです。文字離れの進む今、子供達に読むことの大切さと、その面白さを伝えてゆくこと。特に、大正デモクラシーの時代、この我孫子の地において鋭い感性をもち、深く感動しながら生きた白樺派の人々の思いを現代に蘇らせ、人々に伝えて行くことなどが、白樺文学館にとって特に大切な役割なのでしょうとの熱いメッセージで、示唆に富んだお話を終えられました。