66.最近の関係記事掲載から

1.小林多喜二の未発表書簡について

白樺文学館便り第62号でご案内の「白樺文学館・多喜二ライブラリー」が、資料収集などの活動開始早々、小林多喜二の未発表の貴重な書簡を入手しました。今回発見された「小林多喜二の大熊信行宛書簡」は、『多喜二全集』未収の初公開のもので、2003年9月8日付「朝日新聞」夕刊に掲載されましたので、ご紹介します。
なおこの書簡は、北海道拓殖銀行のトレードマーク、星型レターヘッド付社用便箋に几帳面な文字で書かれており、歴史の一頁を映し出しています。
『小林多喜二全集』(新日本出版社 1980)に、多喜二書簡は1923年8月から1933年1月まで計、165通が収められていますが、『全集』に収められたものでも、その後戦災や国禁の書の著者からの手紙ということで処分されたものもあり、その6割以上もその行方が分からなくなってしまっていて、現在保存が確認されているものは60通程度でしかありません。
また、恩師・小樽高等商業教授大熊信行宛の書簡は一通も収められていません。
それだけに、今回発見された書簡の存在意義は大きいものといえましょう。 内容的にも、
「朝日新聞」9月8日付夕刊「単眼複眼」で紹介された志賀直哉との関係だけではなく、
手紙の一節に
 「讀賣新聞の消息欄で、先生が新潮社から「社會思想家としてのモリスとラスキン」を出す豫告を見て、心から嬉しく思ひました。出版されたら、早速小樽新聞に広告でもして貰ふやうにし、友達にもすゝめます。益々御奮闘を祈って居ります」 
とあり、
これまで多喜二による大熊の著書「大熊信行先生の『社会思想家としてのラスキンとモリス』」書評が、全集に収められていることは知られていますが、その発表にどのような背景があったのかが、今回この書簡の出現で初めて明らかになったのです。
また、書簡中にでてくるウィリアム・モリスは、芥川龍之介が卒論の対象とした人物で、白樺派の青年たちも大きな影響を受けました。
そのひとりである富本憲吉は1912年『美術新報』に「ウィリアム・モリスの話」を、さらに柳宗悦は1929年に濱田庄司とともにイギリスのモリスの家に立ち寄ったエピソードを、1934年『工芸』「工芸雑話」の「ウィリアム・モリスの仕事」に書いています。 小林多喜二、大熊信行、ウィリアム・モリスとラスキンと柳宗悦等白樺派との関係を考察すると、今回の手紙公開の文学史的意味は、予想以上に大きなものがあると思われます。
こうした内容については、松澤信祐先生(文教文学教授)からも、11月30日に浜離宮・朝日ホールで開催予定の「小林多喜二生誕100年記念シンポジュウム」(仮称)、はじめ文学研究専門誌など、多方面からの研究成果発表がなされる見込みです。
誕生間もない「白樺文学館・多喜二ライブラリ−」のこれら一連の動きは、関係各方面より、大きな期待と注目が寄せられております。(佐藤三郎)

2.作家坂上弘先生と書斎(「日本経済新聞」より)

「優しい碇泊地」(読売文学賞)「田園風景」(野間文芸賞)「台所」(川端文芸賞)「近くて遠い旅」などで著名な作家、坂上弘さんは、白樺文学館の近くの我孫子市内に25年間ほど住んでおられます。文学館前の志賀直哉旧邸址等へ散歩の帰りに何度か当館にスット立ち寄られ、1階資料室で静かに調べ物をされたり、本を読まれたりして過ごされます。そんな日々の様子を2003年7月27日付「日本経済新聞 文化欄」に「団地の憂鬱」と題で発表されており、
「…なんだか自分だけの書斎にいるような贅沢な気がする。」と大変光栄なお言葉を頂戴しています。 穏やかなお天気の午後3時頃、白樺文学館の一階資料室を訪ねると、坂上先生にお会いできる(?)かもしれません。(SW)

3.手賀沼と利根川、水と暮らす町「我孫子」
       (「東京人10月号」NO195号より)

朝日新聞記者を経て作家・評論活動に入り、優しい風貌もあってか、とりわけ女性ファンが多いという川本三郎さんが、編集の中心として人気の月間雑誌「東京人」に我孫子の紹介記事が掲載されました。
数日前、白樺文学館で2時間ほど調べ物をされてお帰り途中の作家坂上弘先生から、「東京人」10月号に「白樺文学館について川本三郎さんが書かれていますが、読みましたか」とのお話があり慌てて買い求めました。さすがに地元我孫子の駅売店、書店では既に売り切れで買えず、幸い都内に出たついでに購入出来ました。少し長めですが、白樺文学館記述部分だけを紹介するには、とてもしのびがたく、味わい深い記事と思われましたので、あえて全文を掲載させていただきました。
なおメインの特集「小津安二郎 生誕100年」も懐かしく興味深い内容ですが、こちらは都合により掲載できませんので、お手数ですが書店でそれぞれご購入されてお楽しみください。(SW)




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