107.「柳カレー考証」(4)

第43回面白白樺倶楽部開催報告

2004年12月10日
講師 石戸孝行氏(京北スーパー相談役)

登場5度目の石戸講師
登場5度目の石戸講師

「柳兼子カレー考証」は回を重ね第4回となりました。白樺派文人の柳宗悦夫人が、バーナード・リーチほかに振舞ったと記述のある(柳宗悦全集月報5号)カレーライスについて、その時代背景、食材、味覚、などを考証した講演のあと、面白白樺倶楽部の年末恒例となった納会をかねた「兼子カレーを食する会」は、今年も大好評にて開催されました。

隠し味でウマサ倍増?
隠し味でウマサ倍増?
クリックで拡大
昨年は鴨肉を入れたカレーにちなんだ鴨柄模様(イタリアフェラガモ社製)のネクタイを着用されてのご登場でした。「今年は鴨ではなくて牛肉カレーですから、ネクタイも鴨の摸様ではありません。」と石戸講師のお話は始まりましたが、今年のネクタイもやはりフェラガモ社製であったとのことです。
以下、石戸孝行氏による「柳兼子カレー考証」とそのカレーの味の報告です。

「兼子カレー」のあれこれ
当時の我孫子の風景 (我孫子市資料編纂、我孫子の生業より)、大正3年前後のカレー事情 文明開化とカレー、カレーの具にカエル,魚、海老、貝類なども使われたとの記録の紹介などがあり、柳家でも、当時たくさん採れた手賀沼のシジミカレーもあったのではないかとの新説?もご披露されました。

2004年版カレー
2004年版カレー
クリックで拡大

本日2004年版 カレーの中身
基本的には大正時代に発行された「家庭実用献立と料理法」と軍隊の調理法を参考にして、我孫子の事情、白樺派の皆さんだったらどうであろうか等を考慮し、現代日本における最高級厳選食材を集めての再現カレーといっても過言ではないものと思われます。

ご飯: 千葉県夷隅郡こしひかり
カレーの肉: 和牛 小山牧場 (柳宗悦は、どちらかというと油っぽいものを好んだようだ)
玉葱: 兵庫県淡路産、 水分の多い柔らかな玉葱
じゃがいも: 北海道雨竜郡幌加内町 男爵
人参: 茨城産美野里町
味噌: 無添加、低温熟成、長野県栄村の手作り味噌
香料: C&B(クロス・アンド・ブラックウエル社)
副菜: 福神漬け(明治18年「酒悦」の野田清左衛門が考案した)
ピクルス、ラッキョウ、マンゴチャツネ
兼子カレー考証関連年表
兼子カレー考証関連年表
クリックで拡大

「兼子カレー」(4)の隠し味
講演の最後に石戸さんは「本日の『兼子カレー考証(4)』のむすびとして、白樺派文人が住んでいた90年前の美しい手賀沼を思いおこして欲しい」と、オペラ『手賀沼賛歌』の上演のおり歌われた、「アリア」をビデオで紹介されました。
オペラ『手賀沼賛歌』は1988年〔昭和63年〕に初演、当時手賀沼は汚染度全国ナンバーワン(現在は9位)であった時代でした。なんとかしてこれをきれいな沼にしたい、白樺派の人々が住んでいた大正時代の沼にしたいという思いが「オペラ」の上演のきっかけとなったということです。出演者総勢500人、舞台装置他裏方さん200人、オペラ実行委員180人、そして3千数百名の観客を動員しての一大イベントとして催行されました。石戸さんはその実行委員長でもあり、朝日新聞の天声人語にとりあげられるなど、当時は全国的に大きな話題となったものです。
オペラ『手賀沼賛歌』の第三幕,「手賀沼を愛した文人たち」で柳兼子(ソプラノ本宮寛子さん)が歌ったアリア「沼べ」と題する中勘助の詩は、美しかった手賀沼を髣髴とさせる一幅の絵のような詩と美しいメロデーは、その後のカレー味を一段と引き立たせた隠し味となったのでありました。

沼べ

作詞 中 勘助
作曲 仙道作三

雨あがりの 納屋のかげに
ぶらりとさがる 支那瓜
柑子(こうし)みかん 茶の花
ねぎの畑  あゐの畑
藍の花 くれなゐにさき
かたはらに 黄菊さく
なきのこる 虫をききつつ
あひるの行水を みてゐれば
渡し舟に のりおくれて
おうおうと 岸によぶ人
雨ぐもは ひくくかかり
沼の波  つめたくよる
ひとりたち しずかに思ふ
うれしくもわれは ここに来しかな

(注)中勘助が、大正九年から我孫子手賀沼のほとりに仮寓したときの日記 「沼のほとり」より。作者三十六歳。

(石曽根四方枝)

関連記事掲載の毎日新聞
関連記事掲載の毎日新聞
クリックで拡大